カルロ・トノーニ 1723年作 ヴァイオリン
『知っているようで知らない名器の逸話』*1でも取り上げたカルロ・トノーニのヴァイオリン (Carlo Tononi 1723) 。再びじっくりと調べる機会に先日恵まれましたので、その際に撮った写真をいくつか紹介します。
楽器を真正面から撮ったよくある写真ではなく、マニアックなディテールが含まれているものが多いです。ところどころ、それらの画像からはなにが読み取れるのかちょっとした解説も載せておきます。
まずは、アーチの膨らみがわかる画像から。光の反射から丸み加減がつかめます。縁部分の凹みがどのあたりから凸に変わっていくのかもわかります。アーチそのものの形状を測って記録することもできるのですが、それだけでは全体の雰囲気が伝わりにくいです。そこで、このような写真があると大変助かります。
凹みの部分がわかりやすいですよね。よく見ると、木の年輪がニスの表面に細かい縦の筋のように現れているのがわかります。
丘の上から見下ろしたよう。というよりは、海面に出てきたクジラの背中に乗ったかのようでしょうか。
もちろん、表板のアーチの様子もこのように。指板やテールピースの下の膨らみがいかにぷっくりしているか、表板が各パーツに付いてしまいそうになっているところからよくわかりますね。
コーナーの写真です。コーナー自体の形状はもちろん、パフリングがどのような手順でどのような形に入れられているか、縁周りの形状とのバランス、などを確認できます。
裸眼では確認しにくい、マーキングに使われたナイフの跡なども、拡大することによってよりはっきりします。
f孔の形状だけではなく、ナイフをどのように使って削ってあるかも確認します。
ニスは、質感や色を実物に近く写真に写すのが非常に難しいです。それでも、剥げ方、木地への染み具合、などなど、参考になることは多いです。
スクロールも角度をつけて彫りの深さがわかるように撮ります。目の部分に数個、マーキングの跡が点々と残っているのですが、わかるでしょうか?
以上、まだまだたくさんあるのですが、この辺でやめておきましょう。他の楽器の写真も少しずつ紹介していきます。お楽しみに。
*1:弦楽専門誌『ストリング』2012年7月号