ヴァイオリン製作 あれ・これ

弦楽専門誌『ストリング』に「知っているようで知らない名器の逸話」を連載していたヴァイオリン製作家、木村哲也がヴァイオリンについていろいろお話しします。ホームページは www.atelierkimura.com

リブの切り出し、厚みだし

ヴァイオリン製作の工程の一つである、リブ(側板)の切り出しと厚みだしを動画にしました。


ヴァイオリン製作 リブの切り出し、厚みだし

 

 

以下、写真でも説明します。

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ノコギリで切り出す板の厚みはだいたい1.8mm〜2.0mmくらいです。あまり厚いと後ほど時間を無駄にします。

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鉋がけに使っているのはごく普通のブロック・プレーンと呼ばれる小型の西洋鉋ですが、刃を見ると……

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このようにギザギザになっています。このような刃を使用することで、楓などの硬い木を削る際に木地を傷めてしまうのを防ぐことができます。

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この刃で削ると木の表面にこんな跡がつきます。

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カンナクズはこんな感じです。

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あとは、このようなスクレーパーと呼ばれる道具を使い、表面を綺麗にします。

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スクレーパーは言ってしまえば、ただの金の板なのですが、しっかりと研いで使うと実によく削れる道具になります。ヴァイオリン製作には欠かせません。

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表面を滑らかにする道具というと、紙ヤスリを思い浮かべる人が、紙ヤスリは表面を引っ掻いて無数の傷をつけながら削る道具なので、どれだけ目の細かいものを使っても仕上がりは、鉋、のみ、スクレーパーなどの切って削る道具には劣ります。

 

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これは、カルロ・ベルゴンツィのリブのアップです。昔の製作者もギザギザのついた鉋の刃を使っていたことが分かります。この道具の跡は通常、外からは見えない内側にそのまま残っているものですが、このように外側にも残っていることが頻繁にあります。

おそらく、刃の跡が全面に残っている状態でリブを曲げてから、スクレーパーをかけたのでしょう。そのため、リブが曲がった状態ではスクレーパーを使い難い場所にこのような跡が現れています

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このベルゴンツィに限って言えば、このようにスクレーパーを使いやすい箇所にも跡が残っていますが、前出の画像に比べるとそれほどあからさまではありません。