ヴァイオリン製作 あれ・これ

弦楽専門誌『ストリング』に「知っているようで知らない名器の逸話」を連載していたヴァイオリン製作家、木村哲也がヴァイオリンについていろいろお話しします。ホームページは www.atelierkimura.com

コピー製作 Part 1. 〜輪郭を写す

「コピー」または「レプリカ」と一概に言っても、いろいろ種類があり、その製作方法も様々です。ここでは、オリジナルとなるヴァイオリンから輪郭をテンプレート*1にする手順を紹介します。

これは、あくまでも「こんなふうにやるんだよ」という紹介にすぎません。ヴァイオリン職人としての訓練を受けていない方は、いきなりお手持ちのガリアーノ、またはお友達のストラディヴァリ試さないでください

 

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表板と裏板の輪郭を紙に写します。裏板の場合はアーチが、表板の場合はアーチに加えて、指板、駒、テールピースが邪魔になるので、画像にあるような普通の段ボール箱*2に穴を開けたもので楽器を支え、ヴァイオリンの輪郭が直接紙に当たるようにします。

輪郭を写す際には、柔らかめの鉛筆を半分に割り、平たい面にマスキングテープを貼ったものを使用します。テープを貼ることで楽器にキズや汚れが付くのを防ぎます。

 

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段ボール箱に取り付けられていた紙を外したところです。段ボール箱と同じように真ん中に穴が開けられているのと、数カ所に切り込みがいれてあるのが分かります。なるべく厚い紙を使うことで、歪みを最小限に食い止めます。

 

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次にトレーシングペーパーに輪郭を写します。使用するトレーシングペーパーも極力厚いものを使用します。これも歪みを防ぐためです。

 

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表板の輪郭をトレーシングペーパーに写しているところです。裏板に使った紙とは違い、ネック及び指板、テールピースが邪魔にならないように工夫されているのが分かります。

 

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トレーシングペーパーから、次は薄い合板に輪郭を写します。鉛筆は使えないので、ケガキ針を使用して、プツプツと穴を空けていきます。

 

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合板を糸ノコで切り、さらに小刀、ヤスリ等で仕上げます。

 

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ヴァイオリンをコピーする際にありがちなのが、輪郭を何度か写していく際に少しずつ大きくなってしまうことです。このようなことが起きないよう、必ずオリジナルから直接とった寸法を照らし合わせながら仕上げます。

これでオリジナルの輪郭をそのまま写したテンプレートの出来上がりです。

 

*1:薄い型

*2:ここで使われているのは味噌の箱ですが、大きさがあえばどのようなものでも構いません