ヴァイオリン製作 あれ・これ

弦楽専門誌『ストリング』に「知っているようで知らない名器の逸話」を連載していたヴァイオリン製作家、木村哲也がヴァイオリンについていろいろお話しします。ホームページは www.atelierkimura.com

Attribution(アトリビューション)−”由来”を正しく読もう!

鑑定書やオークションで使われるAttribution(アトリビューション、由来)はすこしややこしいので気をつける必要があります。下に例をあげます。これらはあくまでも鑑定書、オークションカタログを発行した人の「意見」だということを覚えておくべきでしょう。

1.「By Antonio Stradivari」

ストラディヴァリ本人によって製作されたものだと私(鑑定家etc.)がみなすもの

2.「Ascribed to Antonio Stradivari」

他の書籍や鑑定書にはストラディヴァリ本人の物だと記されているが、私は同意しない

3.「Attributed to Antonio Stradivari」

ストラディヴァリ本人のものだと言い伝えられているが、私は同意しない(日本の骨董でいうところの「伝」)

4.「Workshop of Antonio Stradivari」
ストラディヴァリの工房で弟子が作ったもの。それが誰だったのかは不明

5.「School of Antonio Stradivari」

ストラディヴァリによくみられる特徴がみうけられるが、おそらく同時代のものではない(Follower ofも同義です)

6.「Circle of Antonio Stradivari」
ストラディヴァリによくみられる特徴がみうけられるが、本人ではない同時代の製作家によって作られたもの

7.「Labelled / Stamped Antonio Stradivari」
ストラディバリというラベル(又はスタンプ)が楽器についている。ただそれだけ。(楽器の状態を示すもので、これだけで楽器の真偽について意見を述べたものにはならない)
f:id:atelier_kimura:20100616193916j:image
これらの用語は、鑑定書や書籍に限らずお店などでも見かけます。機会があれば注意を払ってみてください。あと、これらの少々複雑な言い回しが使われはじめたのは、別に消費者を騙そうとしているからではありません。もちろん、みんながみんな善人ばかりではないので(どこの世界でも一緒ですね)これらの用語を覚えておいても損はしないでしょう。