なぜヴァイオリンを作っているか Part 2.
−なぜヴァイオリン製作家になったんですか?
−なるべくしてなりました
先日お話したように、大橋ピアノ研究所を訪れたことで、楽器作りへの道を進むことに決めた私ですが、それならなぜピアノを作っていないんだという疑問を持たれる方がみえると思います。
なぜでしょうか?
私もその当時は、「世界一のピアノを作ってやる!」と意気込んでいました。しかし、ピアノを作るとなると、自分独りでなにもかもやるというわけにはいきません。そこで、目をつけたのが、ヴァイオリン製作でした。弦楽器ならば個人の工房で自分の思いのままに作ることができます。なにぶん自分勝手なところがある私には、自分の思い通りにできるということがとてつもなく魅力的でした。
ピアノかヴァイオリンか、と決断をせまられた時に私が既にイギリスに渡っていたことも、最終的に後者を選ぶ要因になったと思います。欧米では日常で音楽に触れることができる機会に溢れています。それは、クラシック音楽だけに限らず、フォークやアイリッシュなどのトラッド(民族音楽)にも言えることで、そのような環境の中、私は様々な音楽を通して、それまでは自分とは違う世界のものだと勝手に思い込んでいたヴァイオリンをより身近な楽器として捉えることができるようになり、そしてその魅力にとりつかれていくことになったのです。
ピアノを捨ててヴァイオリン製作を選らんだ当時は、もちろん後ろめたさがありました...それがベストの選択だったと、今は確信していますが。
ヴァイオリン製作は私にとっての天職です。いうまでもなく私自身が選んだ道ですが、ときにはヴァイオリンが、私を選んでくれたように感じます。なぜでしょうかね。